末梢神経・自律神経疾患

 末梢神経障害、自律神経障害の原因は様々です。自己免疫疾患によるもの、栄養のバランスの乱れによるもの、糖尿病や過度のアルコールによる場合などがあります。

 

☆ギラン・バレー症候群

 筋肉を動かす運動神経が障害されて、両手両足に力が入らなくなる病気です。病気の原因としては自分を守るための免疫のシステムが異常となり自分の神経を攻撃するためと考えられています。一番症状の強い時期に、血液中に神経に存在する糖脂質という物質に対する抗体が出現します。その自己抗体が運動神経の機能を障害して手足の筋肉が動かなくなる、という機序が明らかにされてきています。
 発病の1-2週前に風邪をひいたり下痢をしたりしていて、1~2週間以内に両手両足が動かなくなるような麻痺の程度が強くなり、重症の場合には呼吸もできなくなります。約半数で脳神経障害も起きてものが二重に見えたり、顔面も麻痺して目を閉じられなくなったり、喋ったり飲みこんだりするのが困難になったり、呼吸するのが苦しくなったりすることもあります。 4分の3以上で、運動神経だけでなく手や足の末梢の部分にしびれる感覚障害も起きてきます。
 手足の麻痺は遅くとも1か月以内にピークに達しますが、数か月以内に半数くらいが徐々に回復し、発病してから1年後には6割の人がほぼ完全に治っていますが、なんらかの障害を残す人が3割います。
この病気に対する有効な治療法は副腎皮質ホルモン療法ですが、単純血漿交換療法と免疫グロブリン大量静注療法を行う場合もあります。

 

☆重症筋無力症

 重症筋無力症は自己免疫疾患です。免疫とは細菌やウイルスなどの外敵の侵入に際して、それに対する抗体を作り、外敵を攻撃する仕組みですが、外敵でなく自分の体の成分に対して抗体を作って攻撃してしまう病気です。これを自己免疫疾患と呼んでいます。
 筋肉を繰り返して収縮させますと、だんだんと力が入らなくなります。しかし安静にして休んでいると、筋力が回復します。この現象を筋肉の易疲労性と呼んでいて、診断をする上で極めて特徴的な症状です。初期には眼筋に症状が現れやすく、眼瞼下垂や物が二重に見える複視などの症状が生じます。次いで顔面筋、舌、咽頭筋の麻痺が出現し、経過とともに四肢の筋力低下も生じます。症状は、午前中は軽く、午後に強くなるという日内変動を示します。
 筋肉の活動は、神経末端から放出されたアセチルコリンという化学物質が筋表面の受容体に結合して生じますが、重症筋無力症の場合、このアセチルコリン受容体に対する抗体がアセチルコリン受容体を破壊し、アセチルコリンと受容体の結合を阻害することによって、神経からの指令が筋肉に伝わり難くなって症状が出ます。

 

☆多発ニューロパチー

 ニューロパチーとは、様々な病気によって生じる末梢神経障害を総称する言葉です。この中で左右対称性に多数の末梢神経が同時に障害されたものを、多発ニューロパチーと呼んでいます。末梢神経の中には、運動神経、感覚神経および自律神経などが含まれています。病気によってそれぞれの神経障害の程度に差があります。運動神経が優位に障害される型、感覚障害が中心の型、あるいは両者を合併した場合などいろいろです。またこれに自律神経障害が加わることがあります。さらに症状の出現する早さによって急性、亜急性および慢性と区別します。

 

1)急性運動神経優位型

前述のギラン・バレー症候群は、急性に進行する運動優位型の多発ニューロパチーです。

2)亜急性知覚運動型

数週から数カ月にかけて症状が進行するニューロパチーです。ビタミンB1欠乏で生じる脚気がこれにあたります。最近は少なくなりましたが、栄養の偏った人や慢性アルコール中毒で問題となります。また悪性腫瘍に合併してこの型の多発ニューロパチーが発生することがあります。その他、ヒ素や鉛などの重金属や有機溶剤の中毒の他、抗がん薬、抗けいれん薬などの副作用でも起こることがあります。

3)慢性知覚運動型

数か月から数年にわたって症状が進行します。糖尿病のコントロール不良が続いていると末梢神経障害が合併します。この糖尿病性ニューロパチーでは足の末梢部、ちょうど靴下を履く部分の感覚障害で発症し、自律神経障害を合併することがあります。

☆周期性四肢麻痺

 上・下肢の筋肉に力が入らなくなり運動ができなくなる発作が、間隔を置いて繰り返し起こる病気です。麻痺を起こしている時は血液中のカリウムが多くの場合は低下していますが、正常値あるいは高値を示す場合もあります。また、遺伝によって起きるものや、甲状腺機能亢進症に合併する低カリウム血性周期性四肢麻痺もあります。肉、魚、アルコールなどが多くて、野菜を食べないような食事を続けていることも低カリウム血症になり、四肢麻痺の誘因となります。なお、治療としては、低カリウム血性の場合にはカリウム剤が有効で、甲状腺機能亢進を合併している場合はこれに対する治療も必要です。

 

☆末梢性顔面神経麻痺

 顔面神経は第7番目の脳神経で、顔面の表情筋を支配しています。この神経が麻痺すると、目や口を閉じることが困難となり、顔面がゆがんでしまいます。

 発症は急性で、2日から5日以内に片側の顔面神経麻痺になります。発症すると、額に皺をつくることができない、目を閉じることができない(兎眼)、頬を膨らませることができない、口笛が吹けないなどの症状が出現します。食事をすると、麻痺をしている側から食べた物や涎が垂れます。運動障害が起こるだけで、顔面の感覚は正常です。ただ舌麻痺側の前3分の2の味覚障害が生じることがあります。

 顔面神経麻痺は、頭部外傷、脳腫瘍、脳血管障害、多発ニューロパチー、寒冷など種々の原因で起こります。また帯状疱疹(ヘルペス)ウイルスの感染によっても生じ、この場合ラムゼーハント症候群と呼ばれます。症状が起こる原因としては顔面神経が炎症によって腫脹し、頭蓋骨の細い管の中で圧迫されて麻痺が起こるとされています。

 早期治療が必要です。顔面の筋肉が動かなくなり完全に閉眼できない、口を閉じられないといった完全麻痺の場合は、一般に抗炎症薬、副腎皮質ホルモンなどを投与しますが、ヘルペスウイルスが原因の場合はバルトレックスなど抗ヘルペスウイルス薬を使います。障害側の閉眼ができなくなり、角膜が乾燥してしまいますからドライアイ対策が必要です。

 

☆本態性振戦

 振戦は拮抗している筋肉が律動的に収縮するために生じる規則的な震えのことです。パーキンソン病では安静時に振戦が生じますが、本態性振戦は緊張時、動作時や姿勢保持をするときに出現します。精神的に緊張すると増強し、字を書けなかったり(書痙)、コップを持つ手が震えたりします。原因が不明なものが本態性振戦で、遺伝が明らかな場合は家族性あるいは遺伝性振戦と呼ばれています。

 治療は交感神経の緊張を和らげるために、交感神経α・β遮断薬の塩酸アロチノロールを1日、1-2回服用すると振戦が減ってきます。

 

☆自律神経障害

 自律神経は交感神経と副交感神経から成っており、内臓器官の働きを調節しています。自律神経障害はこの調節がうまくいかなくなって、めまい、のぼせ、ふらつきなどいろいろな不定の症状を見せる病気です。原因は、なんらかの器質的疾患に伴って起こるもの、自律神経そのものの異常によるもの、神経症的なものなどに区別されます。

 病気としては、血管神経症、消化器神経症、呼吸器神経症、起立性調節障害などがあげられます。思春期から50歳代に多く、特に20~30歳代に多くみられます。一般的に女性に多く、性周期も関係することが多いです。女性の更年期障害、子供の立ち眩みもこのうちに入ります。

 誘因としては生活リズムの乱れのほかに、強いストレス、外傷、手術、中毒、慢性疾患の経過中、さらに妊娠や分娩、アルコール、タバコなどの乱用があげられます。また疲労や不眠、職業病が関係することもあります。

 規則正しい生活をする、趣味を楽しむ、家族や友人たちとの楽しい時間を過ごすなどの指導をします。それでも改善が十分ではない場合は漢方薬や自律神経調節薬、マイナートランキライザー(精神安定薬)などで治療します。