脂質異常症

 脂質異常症は動物性脂肪、乳製品、甘いものなどが多い食事を好んで食べていて、血液中の脂質に変化が起こってしまった状態です。この状態を続けているとやがてはこれらの脂質が血管壁にへばり付いて動脈硬化を進行させてしまいます。脂質異常症の診断基準は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)140mg/dl以上、中性脂肪(トリグリセライド)150mg/dl以上、HDLコレステロール(善玉コレステロール)40mg/dl未満の何れかを満たしたものとされています。総コレステロールより、LDLコレステロールの方が脳血管障害、虚血性心疾患との関連性が高いということが明らかになり、総コレステロールは診断基準から外されました。

 

☆血清脂質

〇リポ蛋白

 脂質であるコレステロールはそのままでは血液に溶けないため、特殊な蛋白質がくっついたリポ蛋白という形で体内を巡っています。このリポ蛋白にはLDL-コレステロールやHDL-コレステロールがあります。

〇高LDLコレステロール血症

 LDLコレステロール(悪玉コレステロール)は脂肪が多く、蛋白質が少ないリポ蛋白で、コレステロールを細胞に届ける働きをしています。必要以上のコレステロールが増えると血液中の活性酸素と結合して活性LDLコレステロールになり、動脈壁に付着してアテローム硬化を起こしてしまいます。アテローム硬化は血流障害を起こし、最終的には血管を閉塞させてしまうので、心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。LDLコレステロールは139mg/dl以下が望ましいとされています。

〇低HDLコレステロール血症

 HDLコレステロール(善玉コレステロール)は脂肪が少なく、たん白質が多いリポ蛋白で血液中の余分なコレステロールや血管壁にこびり付いているLDLコレステロールや中性脂肪を筋肉や肝臓へ運ぶ作用があり、別名、血管の掃除人ともいわれています。HDLコレステロールが多いとアテローム硬化の進行を阻止するので、心筋梗塞や脳梗塞の予防につながります。HDLコレステロールは40mg/dl以上が望ましいとされています。

〇高中性脂肪血症

 空腹時の中性脂肪値が150mg/dl以上の場合、高中性脂肪血症としています。この検査は食事の影響が大きく、検査の前日に遅くまで飲食をしていた場合や、朝食を食べて間もない場合は高い値になってしまいます。中性脂肪は燃やして利用するエネルギー源ですが、多すぎると動脈硬化、皮下脂肪、内臓脂肪、脂肪肝などの原因になってしまいます。中性脂肪は150mg/dl以下が望ましいとされています。

〇適正体重

 肥満とは脂肪組織が過剰に蓄積した状態と定義され、日本肥満学会は肥満指標としてBMIを提唱しています。
 ※ 体重(kg)÷身長÷身長(m)=(BMI)
この計算式で基準値が22で、25以上を肥満としています。例えば160cm、56kgの人は56÷1.6÷1.6で21.9となります。160㎝の人が64kgになると64÷1.6÷1.6でBMIが25ですから、64kgが上限ということになります。
 最近、厚生労働省がメタボリック症候群のチェックのために、臍の高さでの腹囲を測定し、男性は85㎝以下、女性は90㎝以下が望ましいとしています。

☆治療方法

〇薬物療法

高脂血症の治療薬にはそれぞれの特徴を持った薬剤が開発されています。

HMG-CoA還元酵素阻害薬はコレステロールの合成を阻害します。副作用に横紋筋融解症があります。:メバロチン、リポバス、リピトール、リバロなど。

プロブコール系は胆汁中にコレステロールを排泄し、腸からの再吸収を阻止すると共に、肝臓でのコレステロール合成阻害作用も持っています。副作用に横紋筋融解症があります。:ロレルコ、シンレスタールなど。

フィブラート系は総コレステロール、中性脂肪を低下させ、さらにHDLコレステロールコレステロールを増加させます。副作用に横紋筋融解症があります。:ベザトールSR、リポクリン、リピディルなど。

イオン交換樹脂製剤は腸からのコレステロール再吸収を阻害します。横紋筋融解症が起こりません。:コレバイン、クエストランなど。

ニコチン酸製剤はコレステロールの吸収を抑制しますが効果は強くありません。横紋筋融解症が起こりません。:コレキサミン、ペリシットなど。

EPA製剤は魚が原料で動脈硬化の予防・治療をしながら肝臓での脂質の合成を阻害します。イコサペントサンエチル・軟カプセル製剤です。高脂血症、閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善に用いられます。横紋筋融解症が起こりません。:エパデールSなど。

EPA.DHA製剤は魚が原料のオメガ-3脂肪酸エチル顆粒状カプセルです。EPA.DHAの両方を含有しています。高脂血症の治療に用いられますが、DHAは血液脳関門を通るため、脳の代謝改善作用も期待でき、アルツハイマー型認知症の予防に寄与する可能性が示唆されています。:ロトリガ。

腸管循環抑制薬は小腸でのコレステロールの吸収を阻害するため、肥満の脂質異常症の人には特に有効と考えられます。:ゼチーア。

注意すべき副作用:薬剤に依っては稀ですが、横紋筋融解症、肝機能障害、腎不全などの副作用が起こることがあります。服薬開始後、筋肉痛、筋力低下、倦怠感などが出た場合は服薬を中止して主治医に相談して下さい。

〇運動療法

 運動は、血糖値、中性脂肪LDLコレステロール、内臓脂肪などを減少させる有効な手段なので、継続することが重要です。最近は自動車、エレベーターなどが発達していて運動不足が目立つので、日常生活の中で活動量が増えるような工夫が必要です。
 バス、電車、地下鉄など公共の乗り物を利用する、エレベーターやエスカレーターではなく階段を用いるなどして自分の足で歩くようにしましょう。早朝に散歩する人がいますが、早朝空腹時に散歩をすると、朝食がおいしくなりお代わりをしたくなってしまいます。理想的には食休みを1~2時間取った後、息が弾むけれど隣の人と会話を楽しめる程度の早さで20~40分歩くのです。最初の10分でブドウ糖を使い、次の10分で中性脂肪を使い、その後はLDLコレステロールの油を使い、それで血液がサラサラになるのです。膝の軟骨をすり減らさないように、歩きやすい靴を履き、歩く姿勢や膝の上げ方に注意して、胸を張って1日20~40分歩いて下さい。
 自分で散歩に使っている靴底の減り方を見て、歩き方のチェックをしてください。O脚など癖がある歩き方で長時間歩いていると、膝関節の軟骨が擦り減ってしまいます。例えサプリメントなどを飲んでも擦り減った軟骨の再生は難しいので歩き過ぎにも注意して下さい。
 筋力が低下している人は、ラジオ体操やテレビ体操を参考にして毎日10分程度のストレッチ体操や筋肉トレーニングを併用すると効果的です。

〇食事療法

 適正な摂取カロリー、栄養バランスを保ちながら、楽しく美味しい食事を楽しみましょう。食生活の楽しみは食品の組合せで如何に栄養素を補い、楽しく美味しく食べられるかに掛かっています。多彩な食品を組み合わせて主食を一定量摂り、主菜、副菜、汁はなるべく多種類のものを取り合わせて栄養素のバランスを取ることが大切です。
 味、硬さ、色、温度など料理面でのバランスも考慮しましょう。汁は具沢山がお勧めです。外食の場合、料理に使用されている油は外から見え難くて摂りすぎを自覚するのは難しいので、油を使った料理は1回の食事に1品を目安にしましょう。中華料理、揚げ物、フライものなどの脂料理は多くても週1回迄という決まりを作るのがよいと思います。調理をするときに、油で揚げる料理より、料理の表面に脂を塗って強火で焼くと美味しく食べられ、なお、脂肪の摂り過ぎを防止できます。

 LDLコレステロールを減らすためには卵、魚卵、揚げ物、フライ物などの摂取を減らしてください。
中性脂肪はアルコール、菓子、甘い飲み物、バター、油などに多いです。オリーブオイルやバージンオイルなどの植物油も油は油ですから、総量規制があります。
 HDLコレステロールを増やすには背中が青いサバ、アジ、イワシ、サンマなどがお勧めです。
 食のリズム、食事の偏り、食べ方などの食生活をチェックしましょう。食行動を自覚し改善することは健康管理上とても大切なことです。内臓脂肪が蓄積している人の食生活には、アイスクリームなどの間食が多い、緑黄色野菜が少ないなどの特徴があるので、毎日のメニュー、食材などの食事日記による食行動のチェックで問題点をあげるのも良いでしょう。

〇ストレス解消法

 ストレス発散のためにケーキ、アルコール、豪華な夕食などの飲食に走っている人も多いようですが、ストレス発散は食以外に求めて下さい。世の中の楽しみは食以外にも、運動、音楽鑑賞、読書、旅行、毎日の散歩などもあります。