高血圧症について

 血圧が高すぎる場合は心臓や動脈に負担が掛かってしまい、脳血管障害、心臓疾患、腎臓疾患など種々の疾患の引き金になりますから、食事療法、運動療法、薬物療法などで血圧を正常域に維持することが必要となります。

 

☆正常血圧

 心臓はポンプの働きをしていて、収縮するときに血液を全身に送り出し、拡張するときに全身からの血液を戻しています。この心臓が収縮して血液を送り出す圧が血圧です。正常血圧は収縮期圧120/拡張期圧80mmHgで、全身に十分な血液を送り出せます。

 

■2009年 高血圧治療ガイドライン

2009年の日本高血圧学会発表の高血圧治療ガイドラインでは
 ・若年・中年で130/85mmHg未満
 ・高齢者は140/90mmHg未満
 ・糖尿病、慢性腎疾患、心筋梗塞後の患者は130/80mmHg未満
 ・脳血管障害患者は140/90mmHg未満

 という高血圧治療目標値にしています。

学会ではこのように定めていますが、私は脳血管障害でも、心筋梗塞後と同じように130/80mmHg未満が望ましいと思っています。

■合併症

高血圧の90%以上が原因不明の本態性高血圧症で、遺伝因子と環境因子が複雑に関連して血圧を上昇させていると考えられています。血圧が高いほど、また高血圧が長く続くほど脳、心臓、腎臓などの障害が進行し、脳血管障害、心血管障害、腎機能障害などを生じる危険性が高くなります。高血圧治療の目的はこれらの病気を予防することです。血圧がさほど高くなくても脳血管障害・心血管障害・糖尿病・腎不全を伴っている場合はより厳しい血圧の管理が必要となります。

■早朝高血圧(モーニングサージ)

高血圧治療中の人が、朝起きてすぐに計った血圧が異常に高い状態を早朝高血圧(モーニングサージ)呼んでいますが、早朝のトイレで脳卒中や心筋梗塞で倒れる原因の一つです。血圧が高い時に、排便で力んだりすることが発症の引き金になってしまいます。
自律神経には日内変動があり、夕方から明け方までは副交感神経が優位で、体温、血圧も下がり脈拍数も減っていますが、明け方に交感神経系が優位になって、心身共に行動的になります。また、この時間は副腎皮質ホルモンも多く分泌されるため、相乗的な作用で早朝に血圧が高くなるのです。

■血圧の日内変動

高血圧で治療を受けている人は、時には自分の血圧の日内変動(1日の間の変化)をチェックしてみてください。早朝と寝る前に血圧を測定し、早朝と寝る前の収縮期血圧の平均値が135mmHg以上で、しかも早朝の血圧が寝る前より20mmHg以上高い場合は、早朝高血圧の可能性があります。その様な場合は、早朝までしっかりと血圧を下げる薬が必要になる場合がありますから、主治医と相談してください。夕食後、または、就寝前に末梢血管を拡張するαブロッカーのデンタントールR3mgを1錠服用すると、モーニングサージが予防できます。この薬の作用時間は短く、約12時間です。

☆生活習慣

 不規則な生活習慣、冬の寒さ、肥満、塩分過量摂取、精神的ストレス、運動不足、喫煙、トイレの力み、睡眠不足、熱すぎる風呂などは血圧を上げる因子です。寒さ対策として防寒グッズの利用やトイレや風呂の暖房が必要な場合もあります。1日30〜40分程度の有酸素運動が好ましいのです。少し早めのスピードで歩く事を奨めます。運動することによって心肺機能を高め、また、細くなってしまった冠状動脈のバイパス形成にも役立つと考えられます。しかし、寒いときの散歩は血圧が上がりがちですから、冬の間は早朝を避けて気温が上がった日中にしてください。

 

■煙草

 喫煙は心血管疾患の危険因子の筆頭です。その他に、種々のがんの原因にもなり、“百害有って一利無し”です。煙草は発がん性の他にも全身の血管を収縮させる薬理作用があり、血圧を上げたり、狭心症を引き起こしたりしてしまいます。

■肥満

 厚生労働省がメタボリック症候群のチェックを検診に導入しています。臍の高さで腹囲を測定し、女性は90cm以下、男性は85cm以下を目途として、腹囲が大きい人が高血圧、糖尿病、脂質異常症の3疾患のうち2疾患以上あるとメタボリック症候群とされています。この様な人は脳卒中、心筋梗塞などの成人病で倒れる危険性が高いので、食事療法、運動療法をしっかりやって、健康を取り戻すようにする事が必要です。腹囲は不摂生をしていると、すぐに増えてしまうものです。

☆治療方法

〇薬物療法

 降圧薬には色々な作用を持っている薬剤がありますから、症状によって使い分けをします。
 α遮断薬は末梢血管を拡張します。薬剤によっては前立腺肥大にも有効です。副作用は立ちくらみです。夕食後に服用する事で早朝の血圧上昇を予防できます。:デタントールR、ミニプレス、カルデナリンなど。

 β遮断薬は心臓をゆっくり弱く収縮させるように作用して血圧を下げたり、頻脈性の不整脈を改善したりします。高血圧で頻脈(脈が速い)の人にはお勧めです。副作用は徐脈(脈が遅い)、心不全です。薬の種類によっては気管支喘息では使わない方が良い場合があります。:アセタノール、テノーミン、ミケラン、ベトリロール、インデラルなど。

 カルシウム拮抗薬は心臓や脳の血管などを拡張させて血圧を下げます。朝1回服用するだけで24時間以上安定して血圧を下げる薬剤が多く使われています。大規模臨床試験で脳卒中、心筋梗塞による死亡を減らす事が明らかになっています。副作用は頭痛や顔の紅潮です。降圧剤を飲み始めてから頭痛に悩まされる場合は、副作用の可能性がありますから主治医に相談して薬の種類を変えてもらうとよいでしょう。:ノルバスク、アムロジン、アテレック、アダラートL、ヘルベッサーRなど。

 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)は血圧を上げるアンジオテンシンⅡの作用を邪魔して血圧を下げます。肥大した心筋を縮小させたり、蛋白尿を減らしたり、糖尿病の予防をするなどの優れた作用も報告されています。大規模臨床試験で脳卒中、心筋梗塞による死亡を減らす事が明らかになっていますし、副作用は特にありません。アンジオテンシン変換酵素阻害薬と作用は似ていますが、より確実に効くとされています。但し、腎機能障害のためにクレアチニンが2mg/dl以上の人、両側腎動脈狭窄がある人、妊婦は服用できません。:ブロプレス、ディオバン、ミカルディス、ニューロタン、アジルバなど。

 利尿薬は利尿効果により循環血液量を減らします。薬価が安いため、米国などでは推奨されています。副作用としては血糖や高尿酸血症などの代謝を増悪させるという好ましくない面が多々あります。:フルイトラン、ノルモナール、ラシックスなど。

 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)・利尿薬合剤は、両剤の組合せでコントロールが難しい高血圧の管理に適しています。日本人は他の国と比べても塩分感受性が高いうえに、塩分を多く摂取しているため、少量の利尿薬の併用が効くのではないかと考えられています。プレミネント、エカード、ミニコンビなど。

〇食事療法

■三つ子の魂百まで

 食事の好みは3歳までに決まると言われています。子供さんはなるべく、ひと手間をかけた食事にして肉、魚、野菜、果物などの素材の味を楽しむようにさせてください。子供のうちは薄味を好むものです。

■塩 分

 2004年に発表された日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインでは、生活習慣の指導として1日あたりの塩分制限は従来の10〜7gから6g未満とより厳しくなりました。血圧を下げるには塩分摂取量は少ないほどよく、漬け物、梅干し、キムチ、明太子など塩分が多い食品は極力減らす必要があります。食塩制限により血液の浸透圧が低下することによって循環血液量が減るため血圧が下ってきます。

■野 菜

 降圧効果を持つカリウムを豊富に含んでいるので、積極的に食べるようにしましょう。緑黄色野菜、淡色野菜、海藻類、茸(きのこ)類は1日300g程度食べるのが望ましいとされています。野菜サラダを食べる時はなるべく、ノンオイルドレッシングにして下さい。

■油もの・甘いもの

 直接血圧には影響がありませんが摂り過ぎていると、中性脂肪やLDLコレステロールが増え動脈硬化が進行してしまいます。野菜を食べるときなどに手軽に炒め物やフライものにしないで下さい。バター・マーガリン・ジャムなどの摂りすぎにも気を付けましょう。脳卒中や心筋梗塞などを未然に防ぐためには、血液がギトギトするような揚げ物、フライものなどを控えてください。

■炭水化物・蛋白質

 炭水化物、蛋白質の摂取量と血圧は直接関係ありません。

■アルコール

 適度のアルコールは、気持ちを穏やかにし、対人関係の潤滑油になります。そのため、ビールなら350ml、日本酒なら1〜2合、焼酎、ウイスキーなら1〜2杯、ワインならグラスに1〜2杯が適量でしょう。ビールはコップ1杯の乾杯で終わりにし、その後、焼酎やウイスキーなどの蒸留酒に換えると摂取カロリーが少なくて済みますし、プリン体を摂り過ぎないようになるでしょう。最近はプリン体オフ、カロリーオフなどという優れもののビールが発売されています。