心療内科

 精神的ストレスが引き金で、種々の症状が出て悩む人が増えています。それらの心の病の解説をしました。

 

☆家族の絆

 最近、登校拒否、閉じ籠り、出社拒否、うつ病、心身症などストレス関連の病気に悩む人が増えています。生い立ち、家庭環境、学校教育などが人格形成、ストレス対処法などに大きく関係しているのではないかと思われます。子供たちが過保護に育てられ、自分で考える習慣が不足していて、判断力も、自立心もないまま成人して社会人になってしまっている人が増えています。子供のときから教育を学校任せにしない、過保護にしない、悪いことをしたら叱る、家事なども手伝わせる、時には抱きしめてスキンシップをするなどを続けていると、家族愛も育まれ、人格の形成も出来、困った時の対処法も身についてストレスにも強くなれるのではないでしょうか。適切な時に精神的に親離れ、子離れをすることも必要です。

 

☆心身症

 心身症とは心理的・社会的な種々の原因によって身体的な病気が実際に起きてしまった状態です。一方、不定愁訴や神経症(ノイローゼ)などのように多彩な症状を訴えても、実際に身体の病気が発症していない場合やうつ病などの精神障害は除外します。主な心身症には頭痛、高血圧症、虚血性心疾患、喘息、過呼吸症候群、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、甲状腺機能亢進症、蕁麻疹、円形性脱毛症などがあります。
 心身症は精神的ストレスが続いた後に症状が出て、一旦治まったとしても、同じようなストレスが加わると同じ症状が出てしまうことも多いようです。
 治療は、身体の病気にはそれぞれの疾患の治療をし、精神症状には心理療法のほか、マイナートランキライザー(抗不安薬)、抗うつ薬などを用いることがあります。問診などで嫁姑問題とか、会社の上司や同僚との人間関係などのストレスが原因だったと分かっただけで症状がなくなってしまう事もあります。

 

☆更年期障害

 更年期障害の原因は卵巣の機能が低下して卵胞ホルモンが分泌されなくなったためで、卵巣の機能が低下してくると、脳下垂体から卵胞刺激ホルモンが過剰に分泌され、卵胞ホルモンと卵胞刺激ホルモンのバランスが乱れ、この乱れが自律神経の不調を引き起こすと考えられます。その他に、心因性ストレスも更年期障害の症状に影響を及ぼします。更年期障害は旦那の帰宅が遅い、子供たちが独立してしまった、自分には趣味もないなどの孤独感、喪失感などが引き金になることも多く、個人差がありますが、ほてり、めまい、異常発汗、動悸、息苦しさ、不眠、うつ状態などの症状が出ることが多いようです。
 予防・治療のためにはまず規則正しい生活習慣を保つことが基本です。起床時間、食事時間、就寝時間などを規則正しくし、読書、散歩、運動などを組み入れるようにします。自宅の近くで親しい友達を作り、趣味、旅行、スポーツ、食事会などを楽しんでいれば、知らないうちに通り過ぎてしまうことが多いようです。
 治療薬は女性ホルモン補充療法(内服薬も貼り薬もあります)、自律神経調節薬(ハイゼット、グランダキシン)、漢方薬(当帰芍薬散、加味逍遥散)などが使われることもあります。

 

☆パニック障害

 パニック障害は動悸、息苦しさ、異常感覚、死の恐怖などの発作が予期しない時に突然生じ、繰り返されます。息苦しくてこのまま死んでしまうのではないかという強い不安症状で救急車を呼ぶのですが、病院に着くころには症状が治まっています。しかし、このような辛い発作がいつ起きるか分らないと言う不安に悩まされるようになり、閉じ込められるかもしれないという不安のため狭いエレベーターや自動車にも乗れなくなったり、会議室などではいつでも逃げられるように部屋の出口に席を占めたりしていますが、症状が進行してくると家から出られなくなってしまいます。

 このような人は子供の時から挫折も感じることもなく自由に育っていたのに、結婚して生活をしている間に、何かちょっと不安が起きたというのが切っ掛けになることが多いようです。不安発作が死の恐怖を伴うのですが、絶対に生命の危険はないこと、不安から逃げないで立ち向かっていく姿勢が大事だと言うことを繰り返し説明します。ソラナックスのような強い抗不安薬や抗うつ薬などで治療を始めます。

 

☆アルコール中毒

 適度のアルコールは精神的ストレスを解消し、人間関係を潤滑にしますが、多量に長期服用を続けていると大脳、小脳、末梢神経などに障害を起こし、比較的若い時期から認知症になってしまいます。人格が変わってしまい、仕事をしなくなる、周囲の状況判断が出来なくなる、対人関係に気を使わなくなるなどの症状が現れ、朝から晩までアルコールを飲み続けるようになり、ついには、アルコール性肝硬変による食道静脈瘤破裂や思わぬ事故などで急死してしまう人もいます。
 結果的には本人の意志の問題で、入院して断酒に成功しても、退院していつまで禁酒が続くかが問題です。

 

☆過呼吸症候群

 自分にとって嫌だと思うストレスが続くと、知らない間に深呼吸を繰り返すことがあります。それが長い時間続いていると、だんだん息苦しくなり、より一層深呼吸を繰り返すようになってしまいます。そのうちに、手足が痺れてきて動かなくなってしまいます。過呼吸(通常より頻回で深い呼吸)のため肺での酸素と炭酸ガスの交換が過剰になり、血液中の酸素濃度が増え、炭酸ガス濃度が低下し、その結果として血液のpHがアルカリ性に傾くのが原因です。

 その予防・治療のためには、大きめのビニール袋か紙袋を持ち歩いていて、ストレスを感じて息苦しくなり始めたら、袋を拡げ鼻と口に当てて袋の中の空気だけで呼吸を繰り返していると、血液のpHなどが正常に戻るので症状が早く落ち着きます。同じような理由で、その場にいる友人や家族、医師などに自分が今のストレスに感じていることや息苦しいという症状などを話したり、電話で親しい友達に症状を訴えたりしていると症状が徐々に軽くなってきます。話をしている間は息をずっと吐き続けなければならないので、過呼吸をしなくなり、血液の状態が正常に戻るのです。ヨガなどの腹式呼吸の要領で、深くゆっくり呼吸をするのがコツです。

 

☆不眠症

 睡眠は頭と身体を使ったときに疲れを癒す生理現象で、溜まった疲労物質を睡眠中に処理します。本も読まず、運動も散歩もせず、テレビを眺めながら昼寝や居眠りをしていたら、疲労物質が少ししか溜まらないので夜に眠くなるはずがありません。
 慢性的不眠症で頻度が高いのは痛み、痒み、咳などの身体的苦痛、音や光などの寝室環境による生理的原因、カフェインやニコチンなどによる薬理的原因、心配事、ストレス、緊張などによる心理的原因、うつ病や統合失調症など精神疾患などです。
ストレスによる不眠の対策は上手なストレス解消法を考えることです。旅行、飲み会、運動、趣味など気分転換を考えましょう。対人関係の悩みの場合、酒の力を借りて、言いたいことを言ってしまうと、お互いの誤解やわだかまりが解消する場合もあります。生活リズムの乱れ対策は朝、決まった時間に起きて、太陽の光を浴びるのが第一です。眠れないからといつまでもグズグズ床にいたり、昼寝や居眠りをしたりしていると、自律神経のリズムが乱れてしまいます。

 寝室の環境をなるべく快適に整えて、定時に消灯しましょう。光刺激は覚醒中枢を刺激するので、洗面、歯磨き、トイレなどを終わらせたあと、明かりを弱めて静かな音楽にしたり、難しい本を読んだりしましょう。楽しい本や推理小説は目が冴えてしまい睡眠不足になってしまいますが、難しい本は睡眠薬の働きをすることが多いと思います。

 高齢になると夕方早い時間に眠くなって床に入りたくなるのですが、そうすると夜中に目が覚めて眠れなくなってしまいます。頑張って11時頃までは本を読んだり、音楽を聞いたりして頑張って起きていた方が、夜によく眠れるようになります。熟眠出来れば睡眠時間は5~7時間あれば十分です。

 睡眠前にしてはいけないことは、飲食です。夕食後にお茶を飲んだり、御菓子を食べたりすることは胃のために好ましくありません。胃の中に食物がある状態で横になる習慣の人に逆流性食道炎が多いのです。胸やけがする、胃がもたれる、食べたものが口に逆流して来るというのが症状です。

 軽いうつ状態になってしまった場合は、自分で治そうと焦っていてもなかなか良くなりません。抗不安薬や軽い抗うつ剤を処方して貰って、早く脱却を計るのが良い方法だと思いますから、主治医に相談して下さい。

 入眠薬、睡眠薬などは睡眠障害の型によって使い分けます。寝床に入っても眠れないような入眠障害の場合は3〜4時間だけ効いているマイスリーやハルシオンなどの短時間作用型の入眠薬を処方します。寝付いて暫くすると目が覚めてしまって、朝まで眠れないというような中途覚醒型の場合は7〜8時間効くベンザリンなどを使い、早朝の覚醒で困っている人には24時間以上効いているユーロジンなどを処方しますが、24時間以上効いている薬剤を毎日服用していると体内に蓄積されて日中もボーッとして眠気が覚めない状態になってしまいますから、週に1~2日休薬する必要があります。入眠剤は入眠直前に服用してください。薬を飲んだときには、ふらつくことがありますから、躓(つまづ)きやすいものは足元に置かないで片づけておいて下さい。

 

☆うつ状態

 うつ病は脳内神経伝達物質であるセロトニンとノルアドレナリンの働きが原因である内因性うつ病と、精神的ストレスが誘因の心因性うつ病に分けられます。

脳内の神経伝達物質が正常に働かないために起こる内因性うつ病は自分の力で治すのは無理なので、精神科、神経科の専門医の治療を受ける必要があります。

 心因性のうつ病は近親者との死別、定年、失業、ストレスなどで気持ちが沈んでしまうことが誘因になります。気力減退、食欲低下、不眠、疲れやすさ、思考力の減少、自殺企図等の症状を伴う事が多いのです。

 うつ病は患者本人の責任ではなく心の病ですから、心のエネルギーを蓄える為に休養・休職が必要で、服薬を続ける必要があります。症状が良くなったり、悪くなったりしながら改善し、良くなるのに3~6か月は掛かるけれど、必ず良くなるので自殺はしないように約束をさせる必要があります。病気の間は、マイナス思考になってしまうので退職・退学など人生の重大な決定をしてはいけません。

 家族の対応としては、多くの場合病人は精神的に心細く思っているのでなるべく1人にせず、傍にいてあげるのが好ましく、頑張れと励まされると強い外圧として感じてしまうので励まさないようにして下さい。多くの場合、家庭の仕事、旅行、外出などは心のエネルギーを使い果たしてしまうので、活動的な事は行わずにゆったりと時の過ぎるのを待つ事を勧めます。

 治療は抗うつ薬や抗不安薬などを使います。最近は神経と神経の接合部(シナプス)でセロトニンやノルアドレナリンが十分に作用できるようなルボックス(SSRI)、トレドミン(SNRI)などの新しい治療薬も開発されています。口渇、便秘、吐き気などは比較的多い副作用ですが、服用中に昼間から無気力で寝ているという状態や口が勝手にもぐもぐ動いてしまうオーラルジスキネジアなどの症状が出てきた場合は薬の量が多すぎる可能性があるので、主治医に相談して減量して貰う必要があります。

 

☆ストレスとの付き合い方

 ストレス対策の一番は規則正しい生活リズムを続けることです。毎朝、同じ時間に起きて太陽の光を浴びて日内リズムの時計をリセットし、夜はやはり決まった時間に床へ入りたいものです。午前中は大脳前頭葉がすっきりしている時間なので、難しい仕事を2~3時間集中して行うことは理に叶っているし、昼食後は大脳も疲れているのであまり頭を使わなくて済む単調な仕事や軽い読書などが好ましいのではないかと思います。

 身体を動かす趣味を持つのもストレス解消につながります。天気が良い日は外に出て、きれいな空気を胸いっぱい吸いながら汗を流すのが清々しいですね。

 会社内の対人関係もうまくいっているときには問題がないのですが、いったん拗(こじ)れ始めると大変なストレスになってしまうこともあります。相手と話をしなくなり、甚だしい場合は相手の顔も見られなくなり、出社しようとしても会社の入り口で足が竦(すく)んでしまうこともあるようです。拗れる前に相手に自分の真情をぶっつけて話し合うのが良いと思いますが、それもできない場合は、双方を良く知っている上役に事情を説明して、相手に自分の考えを伝えてもらう方法もあります。会社の飲み会がある場合はアルコールの力を借りて本音をぶっつけあうという手段もあります。

 普段からプラス思考で、楽しく仕事をしていると脳で分泌される快楽物質であるドパミンが増えるとされています。ドパミンが増えると免疫の働きも良くなり、キラーT細胞が増えるので、がんなど色々な病気の予防にもなると言われています。仕事はきちんとこなし、アフターファイブは仲間とわいわい騒ぐのが健康に良いということにもなりそうです。

 

☆ストレスに勝つ食事

 脳細胞は蛋白質やリン脂質などから出来ていますから、良質の蛋白質、新鮮な魚介類などはお勧めです。ビタミン、ミネラルは神経伝導、代謝を活発にすると考えられます。新鮮な緑黄色野菜、淡色野菜、海草類、茸(きのこ)類なども十分に摂るようにしてください。大脳はブドウ糖と酸素しか利用できないので、炭水化物は必要です。食事は朝食、昼食はきちんと摂り、夕食は少なめに抑えるのが健康に繋がります。