整形外科疾患

 骨塩量が減少し、身長が減ったり、背中が丸くなったり、骨折しやすくなったりする骨粗鬆症、身体を支えている脊椎疾患、各関節疾患などの説明をしてあります。

 

☆骨粗鬆症(こつそしょうしょう)

 骨粗鬆症とは、骨塩量が減少するとともに、骨の繊維構造が変化するため骨がもろく、骨折しやすくなった状態をいいます。骨にカルシウムが充分あり、骨塩量が正常の場合は転んでも骨折しなくても済むことが多いけれど、骨粗鬆症になってしまうと骨折を起こしやすくなります。胸椎や腰椎の骨塩が減少してしまうと上半身の体重を支えられなくなって脊椎の圧迫骨折を起こし、背中が丸くなってしまいます(亀背)。また、転んだときに大腿骨頚部の骨折や手首の橈骨の骨折を起こすことも多くなります。

 整形外科や内科などで手首や腰椎のレントゲンなどで骨塩量を測定してもらい、骨塩減少または骨粗鬆症の診断がついた場合は、カルシウム摂取、定期的な運動、日光浴などを続ける他に、ビタミンK、ビタミンD、閉経後骨粗鬆症治療薬などを処方してもらって服用を続けるのも骨折予防に繋がると思います。

 

☆頚椎(けいつい)

 頚椎は運動器として働く一方で、脊髄がその中心を通っています。従って、頚椎あるいはその周辺組織の異常は重大な障害を来します。頚椎の疾患では頭頚部の運動障害、肩凝りなどの他に、変形性頚椎症や椎間板ヘルニアなどで障害が頚髄まで及ぶと上肢の運動障害や知覚障害が起こり、障害が進行すると歩行障害、排尿症状など下半身の症状も現れてきます。

 

☆肩関節

 肩関節は肩甲骨と上腕骨で構成される関節で、上腕がさまざまな動きが出来ます。

〇腱板損傷(けんばんそんしょう)

 上腕の運動を司る筋肉が上腕骨に付く腱の部分を腱板と言いますが、腱板は肩関節のさまざまな運動により圧迫・牽引・摩擦などの刺激を受けているため加齢とともに変性し、軽い外力が加わっただけでも損傷や断裂をしてしまうことがあります。そのほかに肩を繰り返し使う運動、手を突いて転倒したり、肩を強打したりすることなどにより若年者にも腱板損傷が起こってしまうことがあります。

〇肩関節周囲炎

 肩関節周囲炎は一般的に四十肩・五十肩とよばれるものですが、明らかな原因が不明な病気です。中年以降に起こりやすいのですが、関節とその周辺組織の加齢による退行性変性が原因と考えられています。特に誘因がなく徐々に肩関節痛が強くなり、次第に髪の毛を梳かせないなど、腕を後ろに回せないような肩関節の運動域の制限も伴ってきます。通常は1年位で後遺症もなく治ることが多いのですが、人によっては反対側で同じような症状が起こる場合もあります。
 治療はロキソニンなどの鎮痛消炎薬の内服やモーラステープなどの鎮痛消炎薬の外用薬を用います。整形外科医は炎症をおさえる副腎皮質ホルモンと局所麻酔剤の混合液を関節内などに注入しますが、副腎皮質ホルモンは副作用があるため、なるべく回数を減らすのが望ましいと思います。入浴・ホットパックなどにより患部を温めて循環障害を改善させることで、痛みを軽減させ、運動制限の改善を図ります。夜間の肩の保温も有効です。ストレッチ体操や筋力トレーニングなどは関節の可動域を保持したりするために有効ですが、強い痛みがある時には症状を悪化させてしまうこともありますので注意が必要です。

〇肩関節脱臼

 肩関節自身には本来ある程度のゆるみがあり、人間の関節の中で最も脱臼の頻度が高い関節です。肩関節の疼痛、変形、運動制限が主な症状です。
 治療はまず、徒手整復(脱臼を元に戻す)で外れた肩を元に戻すことを試み、成功できなかった場合は局所麻酔または全身麻酔下で徒手整復を行います。整復後は3週間ぐらい三角布で吊って安静を保ちます。

☆手関節TFCC損傷

 手関節捻挫は、手をついたり、捻ったりして、手関節部に疼痛が生じる軟部組織損傷で、そのなかのひとつにTFCC損傷があります。TFCCとは日本語では三角線維軟骨複合体といいます。 この損傷は、転倒して手をついたりしたときなどの外傷によって生じる場合、慢性的な使い過ぎなどによって生じる場合などがあります。手関節捻挫に対しては、疼痛軽減のために手関節部が動かないように固定をしますが、TFCC損傷でも外傷性のものに対しては、2~4週間の固定を行います。経過が長い場合は局所麻酔薬とステロイド薬の関節内注射や、簡単な装具を装着しますが、疼痛が持続する場合は、手術を行う場合もあります。

 

☆脊椎

〇椎間板ヘルニア

 椎間板とは、腰椎の間でクッションの働きをしている軟骨です。この椎間板が、後方の脊髄に向かって突き出ることを椎間板ヘルニアと言います。腰痛以外に坐骨神経痛があり、足がしびれたり、下肢の筋力が低下したりしますが、ヘルニアが出っ張る方向や大きさなどによって症状が異なります。初回の発作では安静にしていれば数日~数週で軽くなる場合が多いですが、体を動かすことで再発する場合もあります。
 MRIなどの検査で椎間板の状態を見ることで診断されます。
 治療は保存療法、薬物療法などが主体になりますが、コルセットなどの装具療法、腰椎牽引、ストレッチ体操などのリハビリテーションを行うことがあります。症状が強い場合には腰椎麻酔の要領で鎮痛薬やステロイドなどを注入することもあります。

〇腰部脊椎管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

 脊柱管という脊髄を囲んでいる管が種々の原因により狭窄している状態を脊柱管狭窄症と呼んでいます。脊柱管が脊椎の変形、靭帯の肥厚など何らかの原因で狭窄してくると、脊髄や神経根が圧迫されるようになり、神経に酸素や栄養が行き渡らなくなり下肢のしびれや疼痛を引き起こしてしまいます。
 中高年者の腰痛の3~4割を占めるとも言われています。典型的な症状が間欠性跛行(はこう)と呼ばれる歩行障害です。歩行していて50~300m進むと足のしびれや痛みのために歩けなくなってしまいます。しかし、腰を少し前に曲げて短時間休むとまた歩けるようになります。症状が進行すると排尿や排便障害で失禁をしたり、尻の感覚が鈍くなったり、足の指先に力が入らなくなったりすることがあります。腰椎MRI検査で診断します。
 治療は血管拡張、血流増加作用などがあるオパルモン、ビタミンB12、ビタミンE、鎮痛消炎薬などが使用されることが多く、コルセットなどの装具を装着し、腰部を安静にさせる方法もあります。腹筋・背筋の強化運動、姿勢の矯正運動などは大切です。症状が強い場合には腰椎麻酔の要領で鎮痛薬やステロイドなどを注入することもあります。このような治療が無効でしびれや痛みが強くなったり、200mも歩行出来なくなるような間欠性跛行が続くようになったりしたときは手術を考慮します。

☆手関節TFCC損傷

 股関節は寛骨臼と大腿骨頭よりなる球関節(関節部分が球形)で、荷重関節(体重などがかかる関節)です。大腿骨頭は半球を上回る球形で、寛骨臼は深く大腿骨頭を収納するように形成されていて、大腿骨頭が容易に脱臼できない仕組みになっています。

〇変型性股関節症

 先天性股関節脱臼による変形性股関節症が多く見られます。この疾患は乳児健診のときに発見できれば、おむつの当て方を変えるだけで治る病気です。最初の症状は動作し始める時に強い痛みを覚え、動作中は軽快するのが普通ですが、症状の進行とともに痛みは持続するようになり、しだいに夜間痛も起こるようになります。
 病側の足への負担を減らすためにステッキを使用したり、装具を使ったりしますが、病状が進行すると手術が必要となる場合もあります。近年は術式も良くなったので、手術後は普通に歩けるようになっています。

〇大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)

 大腿骨頭阻血(そけつ)性壊死は病因不明のことが多いのですが、ステロイド剤の長期多量使用、全身性エリテマトーデス(SLE)、アルコール多飲などが原因となる場合があります。
 保存的治療としては体重負荷を避けるようにしますが、人工骨頭置換術を行い場合もあります。

☆膝関節

 膝関節は人体関節の中で最大の関節です。直立歩行をする人間の膝関節には他の関節に比べて荷重が掛かることと、伸展位から屈曲まできわめて大きな可動域があるという特徴があります。膝の中の大きな靭帯は主に内側側副靭帯・外側側副靭帯と前十字靭帯・後十字靭帯の4本があり、これらの作用により膝の動きが保たれていて、左右・横方向にも安定しています。

〇変形性膝関節症

 関節軟骨の変性や磨耗、骨の増殖や変形などによって慢性、進行性に膝関節の変形が起きた状態です。加齢、肥満、歩き過ぎなどによって関節の軟骨が磨り減り、さらに骨が変形し痛みを増します。歩行しやすい靴を履き、姿勢を正しくし、膝を上げる歩行を心掛けましょう。O脚などの癖がある歩き方は膝関節内の軟骨の一部が擦り減ってしまう原因にもなりますから、靴底の減り方でチェックしてみましょう。

〇膝蓋骨脱臼・亜脱臼

 脱臼や亜脱臼などはスポーツをすることにより起こることが最も多く、一旦脱臼しても自然に整復されることが多いため治療を受けないでそのまま放置している人もいますが、対応を間違えると頻繁に脱臼を繰り返すようになります。
 予防、治療のため、大腿四頭筋(太ももの筋肉)の強化を図ります。

〇靭帯損傷

 スポーツ中や転倒などで膝関節に強い力が加わった時に靭帯損傷が起きてしまうことがあります。疼痛が強い場合や、さほど痛くないので放置している場合などがありますが、関節鏡検査などで診断し、治療法を決めます。

〇半月板損傷

 膝屈曲位で捻りが加わったときに損傷しやすいので、しゃがんだ姿勢で働く人やスポーツ選手に多く見られます。関節鏡検査などで診断し、治療法を決めます。

☆ロコモティブシンドローム

 日本整形外科学会では骨、筋肉、関節など運動器の障害によって介護が必要になってしまった状態を表す新しい言葉として“ロコモティブシンドローム(ロコモティブ症候群)”(通称、ロコモ)という名前を提唱しました。ロコモティブは英語で歩く、運動する、機関車などの意味があり、日本語名で“運動器症候群”と言い、骨、筋肉、関節などの運動器の働きが衰えて自立した生活が出来なくなり、介護が必要になる危険性が高い状態です。
 片足立ちで靴下が履けない、家の中で躓いて転ぶ、階段を上るのに手摺が必要、横断歩道を青信号で渡りきれない、15分くらい続いて歩けない、2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難などはロコモティブ症候群のチェックポイントです。

 

☆廃用症候群

 安静状態が、長期に続く事によって起こる、心身のさまざまな機能の低下等を指します。筋萎縮、関節拘縮、褥瘡、骨粗鬆症、起立性低血圧、便秘、尿便失禁、うつ状態などが起こります。寝たきりになってしまうと、手足が硬縮してしまい、床擦れ、慢性膀胱炎、誤嚥性肺炎などを引き起こしかねません。寝たきりの状態を脱するために、昼間は座るようにするとか、出来る範囲での運動、リハビリ、マッサージなどを続けることが望ましいです。

 

☆いつまでも動けるために

 活動的な生活を送る、普段からよく歩く、適度に日光に当たる、栄養のバランスを取る、十分な休養を取るなどが大事なことです。家族や楽しい仲間とあちこちに出かけて、景色、温泉、食事などを楽しむのもお勧めです。“ピンピンコロリ”をモットーに、日ごろからの生活習慣に気を付けましょう。