内分泌疾患

 甲状腺、副甲状腺、膵臓、副腎、卵巣、睾丸などの各内分泌器官でホルモンを分泌し、そのホルモンの働きで体内の環境を整えています。脳下垂体は独自のホルモンの分泌をする一方で各種ホルモンの分泌をコントロールする議長としての重要な役割も担っています。

 

☆脳下垂体

〇脳下垂体前葉機能低下症

 脳下垂体は前葉と後葉に分けられます。このうち、前葉で作られるさまざまなホルモン分泌が損なわれて起きる病気を言います。前葉ホルモンには成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、プロラクチン(乳汁刺激ホルモン)、甲状腺刺激ホルモン、性腺刺激ホルモンなどがあります。脳下垂体前葉機能低下症はシーハン症候群(出産時の大出血に伴う症候群)、下垂体腫瘍、頭部外傷、結核、放射線治療後の後遺症など、さまざまな原因で起こります。
 それぞれのホルモンの働きが低下した症状が現れます。成長ホルモンの分泌低下では下垂体性小人症、甲状腺刺激ホルモンの分泌低下では寒がり、乾燥肌、粘液水腫など甲状腺機能低下症、性腺刺激ホルモンの低下では、小児期で起こると二次性徴が現れず、成人期では性欲低下、男性では勃起不能、女性では無月経などになります。副腎皮質刺激ホルモンの分泌が低下した場合、倦怠感、筋力低下、血圧低下、低血糖などの症状が現れる副腎皮質ホルモン分泌障害になる場合もあります。下垂体腫瘍が視神経を圧迫してきて両眼とも内側は見えるけれど、外側から見えなくなってくるという視野障害が現れ、拡大が進行して視床下部を損なうと、尿崩症、食欲異常、体温異常などを起こす場合があります。
 種々のホルモン検査の他に、頭部単純X線、CTスキャン、MRIによる画像診断、視力及び視野検査などで診断します。

〇成長ホルモン分泌過剰

 脳下垂体の成長ホルモンを作る腫瘍から成長ホルモンが過剰に分泌されて起こる病気で、思春期前に発症すると身長が著しく伸びて巨人症になり、思春期を過ぎて骨の成長が止まってから発症すると、手足が大きくなり、特有な顔貌や体形を示す末端肥大症になります。
 治療は脳下垂体の手術を行います。

〇プロラクチノーマ

 プロラクチノーマとはプロラクチン(催乳ホルモン)を産生する細胞が増殖したできものです。プロラクチンは乳腺を発達させるホルモンで本来、妊娠すると赤ちゃんに母乳を与えるために大量に産生されるホルモンです。妊娠していないのに大量に産生されるため、体のホルモンバランスは妊娠しているのと同じような状況となり、月経が止まり、乳汁漏出が起こります。
 治療は下垂体の手術を行います。

〇副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)

 副腎皮質刺激ホルモンは、副腎に作用し主として副腎皮質ホルモン(ステロイド)と呼ばれているホルモンを産生させるように働いています。副腎皮質ホルモンは糖、たん白、脂質、水・電解質など多くの物質の代謝に関係していて、炎症や免疫機能を抑制する効果を持つホルモンの代表でもあります。
 副腎皮質刺激ホルモンが過剰に分泌された場合、クッシング病といわれる病態を呈します。

〇甲状腺刺激ホルモン(TSH)

 甲状腺刺激ホルモンは甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンの産生を促すホルモンです。したがって、甲状腺刺激ホルモンの値は甲状腺ホルモンと同時測定することによって視床下部-下垂体-甲状腺系の障害を知るのに有用です。脳下垂体の甲状腺刺激ホルモン産生腫瘍や異所性甲状腺刺激ホルモン産生腫瘍の様な産生過剰の他に、慢性甲状腺炎(橋本病)で甲状腺ホルモンの機能が低下した場合にホルモン値が上昇することがあり、逆に甲状腺自体の機能亢進により、ホルモンの値が低下する事もあります。

〇性腺刺激ホルモン

 性腺刺激ホルモンは、男性では精子形成、女性では月経や妊娠などのために身体を整える働きがあります。脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンには、女性では黄体形成ホルモンと卵黄刺激ホルモンがあり、男性では睾丸の機能を調節する働きがあります。視床下部のゴナドトロピン放出ホルモンにより分泌が促進されます。

〇尿崩症

 下垂体後葉で分泌されるバソプレッシン(抗利尿ホルモン)が腎臓に働いて血液中の水分が尿中に排泄されるのを調整しています。このホルモンの分泌が不足すると尿量が異常に増えてしまう尿崩症になります。尿崩症はバソプレッシンの合成や分泌の低下によって生じる中枢性尿崩症と腎尿細管での作用が障害されて起きる腎性尿崩症とに分けられます。症状は口渇、多飲、多尿、1日3,000ml以上の多量排尿です。夜間も何回もトイレに起きますので睡眠が障害されます。

☆甲状腺

 甲状腺は甲状軟骨(のど仏)近くにあり、そこで分泌される甲状腺ホルモンは代謝をコントロールするホルモンで、脳下垂体が甲状腺ホルモン分泌量を管理しています。

 

〇甲状腺機能亢進症(バセドウ氏病)

 甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモン過剰による症状です。せっかちで苛々し、頻脈、体重減少、手指の振戦、掌の発汗増加、瀰漫(びまん)性甲状腺腫大、眼球突出などがあり、血液検査で甲状腺ホルモン増加が見られます。代謝が活発になってコレステロール、中性脂肪などを消費してしまうため、血清脂質などが異常に低下してしまいます。
 治療はメルカゾールなどの抗甲状腺薬を用いますが、メルカゾールの副作用に顆粒球減少症があります。そのため、服薬開始後2ヵ月は2週間ごとに血液検査を行う必要があります。顆粒球が減少してしまうと細菌感染に弱くなるため、生命にかかわる事態になってしまいます。歯茎がむき出しになり、疼痛で食事が出来なくなってしまうような口内炎や重症の肛門周囲膿瘍が最初の症状です。気になる症状が出た場合は、服薬を中止し、速やかに主治医に連絡する必要があります。細菌がいない無菌室(クリーンルーム)に入院して治療を受けることになります。

〇甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンの分泌が足りない疾患で、甲状腺自体に障害があって起きる原発性甲状腺機能低下症の場合と、視床下部下垂体に原因があって機能低下症になる中枢性甲状腺機能低下症に分けられます。成人に見られる甲状腺機能低下症は大半が自己免疫疾患である慢性甲状腺炎(橋本病)によるもので、甲状腺機能亢進症に対して放射線療法をした後の機能低下症という後遺症もあります。女性に圧倒的に多い疾患で、体の代謝が低下するために、寒い、疲れる、面倒くさい、動きたくないなど身体的、精神的に退行現象を生じ、うつ病やものぐさ病のようにも見えることがあります。粘液水腫(押しても凹まないむくみ)を伴うこともあります。
 治療はチラーヂンSなどの甲状腺製剤を使用します。

☆膵臓

〇インスリノーマ

 通常は血液中の血糖値の増減に応じて、膵臓のランゲルハンス島でインスリン分泌量を増減しながら血糖値のコントロールをしています。所が、膵臓にインスリン分泌をする細胞が増加する腺腫(インスリノーマ)ができると、常に多量のインスリンを分泌するので低血糖を繰り返してしまいます。上腹部エコー検査やCTスキャンなどで膵臓の小さな腺腫を探します。
 治療は腺腫の摘出術を行います。

☆副腎

 副腎は腎臓の上にある小さな臓器ですが、糖質代謝や電解質代謝に係わるような重要な働きをするホルモンを分泌しています。副腎皮質ホルモンは生命の維持に必要なホルモンで、健康な人では体の状態に合わせて適切に分泌されています。

 

〇クッシング症候群

 糖質代謝に関係する副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの分泌過剰のために、中心性肥満、満月様顔貌、水牛様の盛り上がった肩、全身の多毛、月経異常、骨粗鬆症、精神異常などの症状が起こります。腹部CTスキャン検査などで副腎腺腫の有無を確認します。
 治療は手術で副腎腺腫を摘出することです。腹腔鏡下摘出術が一般的に行われています。

〇原発性アルドステロン症

 副腎皮質から電解質代謝に関係するホルモンであるアルドステロンの分泌過剰のため、治療をしても薬に反応しないような高度の高血圧が続き、著明な低カリウム血症が持続する場合に、この疾患を疑います。片側性の副腎腺腫が大部分です。腹部CTスキャン検査などで副腎腺腫の有無を確認します。
 治療は手術で副腎腺腫を摘出することです。腹腔鏡下摘出術が一般的に行われています。

〇褐色細胞腫

 副腎髄質などに存在するクロム親和性細胞より発生するカテコールアミン産生腺腫です。カテコールアミンが多いため、交感神経が過剰に緊張している状態です。著明な高血圧、高血糖、動悸、体重減少、発汗過剰などが特徴的です。
 治療は手術で副腎腺腫を摘出することです。

〇アジソン病、急性副腎不全(副腎クリーゼ)

 副腎皮質が何らかの原因で90%以上破壊され各層の副腎皮質ホルモン産生欠乏症となった状態を示します。アジソン病は慢性的なコルチゾール欠乏症であり、色素沈着で色黒になり、低血圧、低ナトリウム血症、低血糖で死に至る重篤な疾患です。
診断は血液、尿検査の他、副腎皮質ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)などを調べ、副腎機能を低下させた原因として結核、感染症、がん、自己免疫疾患などの検査も行います。
 治療は副腎皮質ホルモンを生涯にわたり服用し続けることです。

☆性腺

 男性・女性の性機能に関係するものです。

 

〇性腺機能低下症(男性)

 男性の性腺機能低下症は、精巣での男性ステロイド(アンドロゲン)産生低下と精子形成能の低下を来す疾患です。原因は精巣自体に障害がある場合と脳下垂体からの性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)分泌低下による続発性のものに分けられます。症状としては二次性徴が起こらず、女性化乳房、筋肉の発育不全などが現れます。

〇性腺機能低下症(女性)

 女性の性腺機能低下症は卵巣からの女性ホルモン(エストロゲン)の産生低下と卵子形成能低下を来す疾患です。原因は卵巣自体に障害がある場合と脳下垂体からの性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)分泌低下による続発性のものに分けられます。症状としては二次性徴が現れない、初経発現が遅れるなどがあります。

 

☆ホルモンを正常に保つ食事

 ホルモンは各内分泌器官で産出される微量な蛋白質です。体内環境を整えるには肉・魚・卵・大豆製品などの蛋白質、緑黄色野菜・淡色野菜・海藻・茸(きのこ)などバランスがよい食事がお勧めです。
 甲状腺ホルモンにはヨードが含まれていますので、甲状腺機能低下症の場合は海苔などのヨードを含む食品を多めに摂り、甲状腺機能亢進症の場合は少なめにすると良いでしょう。