肝・胆道疾患

 肝臓、胆のう、胆管系の病気の解説をしてあります。B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなどに感染すると、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がんなどになる可能性がありますから、定期的な検査と治療が必要になります。

 

☆肝臓

 肝臓は右上腹部にあり横隔膜に覆われながら、肋骨で守られています。重さは1.0~2.0kgもあり、体内最大の化学工場として働いています。肝臓では食物の消化を助ける胆汁の生産、炭水化物、脂質、たん白質などの代謝、身体に必要なアルブミン、血液凝固因子、血清脂質、グリコーゲン、ホルモン、リン脂質などの合成、ビリルビン、コレステロール、アンモニア、薬物代謝物などを分解・解毒して胆汁に捨てる作用などをしています。

■肝臓疾患

〇急性肝炎

 急性肝炎は、一般的には肝炎ウイルスや薬剤などによって肝細胞が破壊される病気で、わが国で通常見られるウイルス性肝炎はA型、B型、C型肝炎ウイルスによるものです。
 A型肝炎は井戸水や生牡蠣などによる経口感染で、まれに意識障害を起こすくらいの重症な肝炎になることがありますが、殆どの場合は数カ月で完全に治ります。
 B型肝炎は母子感染、鍼治療、入墨、歯科治療、手術時感染、輸血、性行為などが感染経路として考えられています。
 C型肝炎は輸血、手術、集団予防接種などが感染源で、性行為では殆ど感染しません。肝炎ウイルスが注射針で感染することが分らなかった頃には乳幼児、小学生たちの予防接種の針を1人1人取り換えずに使っていたのですが、近年は予防接種、採血など血液が関係する器具はすべて使い捨てになっています。肝炎ウイルスはアルコール消毒などでは死なないため、鍼治療を受けたりする場合は、自分専用の鍼を使うようにして下さい。

〇慢性肝炎

 慢性肝炎は6ヶ月以上の肝機能検査値の異常と肝炎ウイルスの感染が持続している病態と定義され、肝炎ウイルスのうち、70%がC型肝炎ウイルス、約20%がB型肝炎ウイルスであると報告されています。慢性肝炎は経過の長い疾患で、進行してくると肝細胞が破壊されて、ついには肝硬変になってしまいます。現在医薬品として多くのインターフェロンがB型肝炎、C型肝炎などの治療に用いられています。
インターフェロンは体内で病原体や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌するたん白質です。このたん白質を使って肝炎ウイルスを駆除する治療を行っています。B型慢性肝炎にはB型肝炎ウイルスの増殖を抑制する作用があるゼフィックス内服薬、エンテカビルバラクルードなど、C型慢性肝炎ではインターフェロン注射だけで治らなかった場合にインターフェロン注射とC型肝炎ウイルス量を減らし、再発予防作用があるリバビリン内服を6カ月併用する治療法などが行われます。
 また、インターフェロンの注射をしないで2種類の抗ウイルス薬を服用するだけでC型肝炎の治療ができるという2種類の新規抗ウイルス薬が保険適応になる予定です。ソフォスブビルとレディバスビルという薬剤です。

〇肝硬変

 肝硬変は慢性肝炎が進行した結果、肝臓実質細胞が壊死した状態で、残っている肝細胞が少なくなっているため、肝臓の働きが非常に低下している状態です。肝臓が小さく萎縮し、表面が凸凹してしまいます。
また、門脈内の血圧も高くなり、食道静脈瘤が腫脹したり、痔疾が増悪したりするようになります。臨床所見、血液検査などのほかに、腹部エコー、CTスキャンなどの画像で肝臓の瀰漫(びまん)性結節性病変、脾臓の腫大などの所見などで診断します。
食道静脈瘤が破裂して急死する事も多いため、静脈瘤に薬剤を入れる静脈瘤硬化療法が必要になる場合もあります。

〇原発性肝臓がん

 原発性肝臓がんの80%がC型肝炎ウイルス感染者で、20%弱がB型肝炎ウイルス感染者です。C型肝炎、B型肝炎ウイルスに感染して30年以上経ち、慢性肝炎、肝硬変を経てから発症することが多いため、肝炎ウイルスが消失していなくて、肝硬変になってしまった人は定期的に腹部エコーやCTスキャン検査で肝臓がんチェックを受け、もし万が一肝臓がんが発見された場合は経皮マイクロ波療法(腹部エコーで見ながら経皮的にマイクロ波をがんに当てる)などでがん細胞を殺す必要があります。
外科的に手術をする方法もありますが、切除術後数年してがんが再発した場合、再手術が難しい場面も出てくるようです。がんが進行してしまったり、肝臓以外の臓器にもがんが転移してしまったりした場合は皮下埋め込み式持続動脈注射化学療法(カテーテルを肝動脈に留置し、体内に埋め込んだポンプから抗がん薬をモーターで少量ずつ送りこんでがん細胞を殺す治療法)もあります。

〇脂肪肝

 肝実質細胞に多数の脂肪が沈着した状態を脂肪肝といいます。正常肝でもリン脂質を主とした脂肪が貯まっているのですが、脂肪肝では特に中性脂肪が多量に蓄積されています。
主な原因は肥満、糖尿病、アルコール、脂質異常症などで、ダイエットと運動で改善します。

〇薬物性肝障害

 すべての薬物は程度の差はありますが、肝機能障害を起こす危険性があり、急性肝炎の10%、黄疸の5%が薬物性肝障害であると報告されています。医薬品だけでなく、漢方薬、民間薬、ドリンク剤、健康食品(サプリメント)なども原因になることがありますから注意が必要です。服薬を開始してから起きた肝機能障害が肝炎ウイルスが原因でないことなどから疑います。アルコール性肝障害も実はビール、日本酒、ワイン、焼酎、ウイスキーなどに含まれているエチルアルコールによる薬剤性肝障害の一種なのです。原因薬物を中止するのが根本療法です。

 

☆胆嚢

 胆嚢は肝臓の下に張り付くようにある袋状の臓器です。形はちょうどナスのような形をしています。肝臓で作られた胆汁を蓄える働きがあります。胆汁は特に脂肪分の消化を助ける働きがあり、胆嚢は必要に応じて収縮して、この胆汁の流れ道(総胆管)を通して十二指腸へ送り出し食物の消化を助けます。

 

■胆嚢疾患

〇胆のう炎

 胆石症や胆道手術の既往など、何らかの原因で胆嚢あるいは胆管に通過障害が起こって、鬱滞(うったい)している胆汁に大腸菌などの細菌感染症が加わって起きた炎症です。胆石が詰まって発病した場合は、激しい右上腹部痛や発熱などが起こります。入院し、安静・絶食・十分な輸液・抗生物質療法を行います。

〇胆石症

 胆石は存在する場所によって胆嚢結石症と胆管結石症に、主成分によってコレステロール石、ビリルビンカルシウム石などに分けられます。症状が無くて検診で偶然に発見されたような場合は、手術をしないで様子を見るか、腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けるか決めます。胆石発作の激痛が出た場合は、まず鎮痛剤などで疼痛を和らげ、その後に手術を考慮します。急性胆嚢炎、胆管結石、膵炎、胆嚢がんなどの合併症がある場合は生命の予後に影響しますから、合併症の治療と胆石除去をします。

〇胆嚢ポリープ・腺腫

 健康診断などで発見される胆嚢ポリープは殆どがコレステロールポリープです。コレステロールポリープは良性ですから年に1回程度、腹部エコーなどで経過観察をしていればよいのですが、10mm以上の大きなもの、増大傾向が見られるものなどは腹腔鏡下胆嚢摘出術を行うことがあります。胆嚢腺筋過形成、胆嚢腺筋症などは無症状であれば6ヶ月毎の経過観察で良いのですが、がんが否定できない場合は胆のう摘出術になります。

〇胆嚢がん・胆管がん

 胆嚢がん、胆管がんの診断は難しく、進行してから発見されることが多い疾患です。右上腹部痛や黄疸などが主な症状です。便が茶色でなく灰白色になったり、皮膚や眼の白目が黄色になったりする場合もあります。疑わしい場合は上腹部CTスキャン検査などを行います。手術が根治療法ですが、進行していて手術が出来ない場合は経皮的に管を胆管に入れて胆汁を体外に出し(ドレナージ)、黄疸が軽くなった後に胆管にステントを入れたり、放射線療法、化学療法を行ったりします。

☆食事について

 適正なカロリーと栄養のバランスが大切です。低脂肪の牛乳、赤身の肉、青魚、貝類、大豆製品などは適正量にし、摂取過剰にならないように注意してください。ビタミン・ミネラルが豊富な緑黄色野菜・淡色野菜・海藻・茸(きのこ)を多めに楽しみましょう。サラダ油でも、バージン油でも、脂肪の摂りすぎは禁物です。油ものは控えめに、特に天麩羅、ラーメン、とんかつ、フライ物など週に1回くらいフライデーにしませんか。そして、アルコールは適正に楽しみ、週に1~2回の休肝日を設けることも必要です。